フリーランスにとっての帳簿とは?法律や確定申告の観点からわかりやすく解説

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フリーランスにとっての帳簿とは

溝口弘貴
本記事の企画・編集者
溝口 弘貴
つなぐマーケティング代表

※このページにはPRが含まれています。

これからフリーランスとして独立・起業しようと考えている人にとって大きな不安であり、いま活躍しているフリーランスにとっても煩わしく感じるのが「帳簿」の存在です。

できれば避けて通りたいと思っていても、帳簿の作成からは逃れられません。

とくに、会計・簿記に苦手意識がある方だと、帳簿と聞いただけでも抵抗を感じるかもしれませんが、あまり不安にならなくても大丈夫です。

一度覚えてしまえば意外と簡単ですし、帳簿に関する作業をラクにしてくれるソフトも充実しています。

本記事では、フリーランスが作成すべき帳簿の種類や役割、帳簿を作成する際の記載方法などを解説していきましょう。

   
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本記事の監修者

溝口弘貴

溝口 弘貴

つなぐマーケティング代表

電気工事士からWeb業界に転職して10数年。現在はフリーランスとしてクライアントサイトのマーケティング支援や自社メディアの運用などをおこなっています。ネットマーケティング検定やIMA検定などIT関連の資格を8つもっています。運営者情報はこちら

フリーランスにとっての「帳簿」とは?

これまでサラリーマンとして働いていた人なら、会計に関する業務に従事していたのでもない限り「帳簿」に触れる機会などほとんどなかったでしょう。

しかし、フリーランスになると会計・税務に関する事務作業はすべて自分でするのが基本です。

そのなかでも「帳簿」に関する事務には「難しい」「面倒」といったイメージがつきまといます。

フリーランスにとっての帳簿とはどんなものなのでしょうか?

「帳簿」とは?

会計における「帳簿」とは、事業に関する取引や資産の動きを記録する台帳のことを指します。

フリーランスにとっては、収支の記録だと考えておけばいいでしょう。

帳簿は、単なる記録ではありません。

お金の流れを可視化する役割をもっているので、経営の分析に役立つ重要なアイテムです。

「記帳」や「簿記」とは?

帳簿に関する用語として「記帳」や「簿記」があります。

取引内容を帳簿に記録することが「記帳」、記帳の方法が「簿記」です。

日々の取引について「簿記」を使って「帳簿」に「記帳」していき、最終的に決算書を完成させるまでが一連の流れとなっています。

なぜ「帳簿」を作成しなければならないのか?

帳簿をつけるという作業は、フリーランスにとっての本業ではありません。

なぜ余計な手間を増やしてまで帳簿を作成しなければならないのでしょうか?

理由1:法律で作成が義務付けられているから

すべての事業者は、国税通則法という法令の規定によって帳簿の作成が義務付けられています。

法律で定められているのだから「作成しない」という選択肢はありません。

2014年よりも前は、一部の白色申告者に限って記帳義務が免除されていましたが、現在は全事業者が対象です。

理由2:確定申告に必要だから

フリーランスになると「確定申告」をしなければなりません。

確定申告では、1年間にクライアントや顧客から支払われた売上・報酬から経費を差し引いて「所得」を算出し、その金額に応じて税額を計算してみずから申告・納税します。

つまり、確定申告をするには詳しい収支の記録が必要なので、帳簿の作成は必須です。

ただし、確定申告の際に帳簿を提出する必要はありません。

フリーランスの確定申告について詳しくみる

理由3:税務調査の対応に必要だから

フリーランスとして活動していると、税務署の調査を受ける機会があるかもしれません。

税務調査では、確定申告の内容が適正なのかを証拠に照らして確認されます。

帳簿は調査の基礎であり、帳簿がなければどのような経費を支出したのかの証拠が存在しません。

証拠がなければ調査官による推計で税額が決まるので、追加で税金を徴収されるのはほぼ確実です。

理由4:経営の分析や見直しに必要だから

経営状態の分析や見直しには詳しい収支の記録が欠かせません。

帳簿の作成には手間がかかるし面倒な作業であることは間違いありませんが、事業を成長させる材料とするためだと考えて前向きに取り組むといいでしょう。

フリーランスが作成すべき帳簿の種類

一言で「帳簿」といっても、1冊の帳簿をまとめれば終わりというわけではありません。

帳簿にはいくつかの種類があり、申告の方法によって必要な種類が異なります。

「主要簿」と「補助簿」

帳簿を大きくわけると「主要簿」と「補助簿」の2つがあります。

主要簿

取引があればかならず記入する帳簿です。

総勘定元帳・仕訳帳の2つがあります。

総勘定元帳 日々の取引の記録を勘定科目ごとにまとめたもの
仕訳帳 勘定科目に関係なく、すべての取引を日付順に記載したもの

補助簿

必要に応じて記入する帳簿です。

主要簿よりも詳しい取引内容を記載することで、主要簿を補う役割があります。

補助簿は詳しく作成しようとすれば多岐にわたりますが、代表的なものとして次の帳簿を備え付けておけばいいでしょう。

現金出納帳 ✓毎日の現金の流れ・残高を把握するための帳簿
✓現金の出入りを取引順に記録する
預金出納帳 ✓銀行口座のやりとりをまとめた帳簿で、口座の入出金を記録する
✓普通預金と当座預金で別々に帳簿を作成することも可能
経費帳 ✓仕入以外の経費の支出を記録する帳簿
売掛帳 ✓取引先ごとの売掛金(いわゆる「ツケ」)に関する取引を記録する帳簿
✓請求書を発行し、翌月・翌々月などに支払いを受ける場合は記録が必要
買掛帳 ✓取引先ごとの買掛金に関する取引を記録する帳簿
✓取引先からの請求書と照合することで正確な取引へとつなげる
固定資産台帳 ✓減価償却する固定資産や繰延資産を記録・管理する帳簿
✓取得時の状況や減価償却の履歴、償却済み額・未償却額などを記録する

これらは、必要に応じて作成するものなので営業形態によっては不要なものもあります。

たとえば、10万円を超える固定資産を持たない場合は固定資産台帳の備え付けは不要です。

帳簿には保存義務がある

帳簿は作成して確定申告に使用したら用済みになりますが、すぐに廃棄してはいけません。

法律によって、一定期間は保存する義務が定められています。

帳簿の保存期間

帳簿の保存期間は申告の方法によって異なります。

白色申告の場合

白色申告の場合、保存の基準はいく分か緩やかです。

ただし、収支の記録を残す義務が免除されるわけではないので、おろそかにはできません。

帳簿の種類 保存期間
収入金額や経費を記載した法定帳簿 7年
業務に関して作成した任意帳簿(法定帳簿以外のもの) 5年

青色申告の場合

青色申告の場合、保存義務は白色申告よりも厳格化されています。

保存していないことが発覚すると過去にさかのぼって青色申告の承認が取り消されてしまい、適用されていた特別控除などがなかったことになって税金を徴収される可能性があるので注意が必要です。

帳簿の種類 保存期間
総勘定元帳
仕訳帳
現金出納帳
預金出納帳
経費帳
売掛帳
買掛帳
固定資産台帳 など
7年

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帳簿は「電子帳簿」として保存可能

以前から電子データによって帳簿を保存する「電子帳簿」が認められていましたが、税務署の事前承認が必要など利用しにくい点が多く、十分に活用されていませんでした。

帳簿への記帳や記録をパソコンに頼っている事業主が増えているなかで、電子帳簿をもっと気軽に利用したいと考えていた方は多かったはずです。

このような声が高まっていたことを受けて、2022年1月の電子帳簿保存法が改正され、電子帳簿の事前承認が不要になりました。

電子帳簿保存法の改正によって今後の帳簿データを電子保存しようと考えている方も少なくないはずですが、注意点も多いのでしっかり確認しておきましょう。

電子帳簿として保存可能な帳簿

総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳などの国税関係帳簿は電子保存が可能です。

パソコンで作成したデータのほか、マイクロフィルムでの保存も可能ですが、紙媒体の帳簿をスキャナで取り込んでデータとして保存する方法は認められていないので注意しましょう。

真実性と可視性の確保が必要

データが改ざんされていないという「真実性」を確保するためには、作成日や改ざんがないことを証明するタイムスタンプが必要です。

また、検索機能や一括検証機能によって誰でも視認・確認できるという「視認性」も確保しなければなりません。

たとえば、表計算ソフトのExcelを使用して帳簿を自作しても、編集履歴を記録する機能をオフにしていたり、メインのシートとは別に索引簿などを作成していなかったりすると、真実性と視認性が確保できていないと判断されることがあります。

導入には経費精算システムの導入が必須

法的に電子帳簿としての保存が認められるためには、電子帳簿保存法に対応した経費精算システムの導入が必要です。

ビズトラのように完全無料で利用できるものもありますが、フリーソフトの多くは電子帳簿保存法に対応していません。

電子帳簿保存法に対応している経費精算システムはほとんどが有料なので、無料トライアル期間を活かして慎重に選びましょう。

Freee会計が提供しているfreee経費精算のように、電子帳簿保存法に対応していて会計ソフトとも連携しているものを利用すれば、帳簿に関係する会計・経理作業の負担は大幅に軽減できるはずです。

帳簿のつけ方は2種類|初心者にもわかりやすく簡易簿記と複式簿記を解説

帳簿をつけることを「簿記」といいますが、簿記にはさらに「簡易簿記」と「複式簿記」の2種類があります。

簡易簿記とは?記帳の方法

簡易簿記とは、別名で「単式簿記」ともいいます。

ひとつの勘定科目について、その増減を記録・集計するだけの簡単な方法で、家計簿やお小遣い帳をイメージすればわかりやすいでしょう。

簿記の知識や経験がなくても気軽に取り組めるので初心者向けといえます。

簡易簿記の記載例

たとえば、報酬の支払いを受けたあと、同日中に事務所の家賃・通信費を支払った場合、簡易簿記では現金出納帳へ次のように記帳します。

日付 摘要 収入 支出 残高
3月1日 売上 200,000 200,000
家賃 120,000 80,000
通信費 30,000 50,000

簡易簿記の付け方はとてもシンプルです。

発生の順番に内容と金額を記録するだけなので、初心者でも難しく感じる点はないでしょう。

ただし「1年間でいくらの売上があったのか」「どんな支出が多いのか」といった分析をするには各項目から数字をひとつひとつ拾い上げて集計しなくてはなりません。

取引のデータを分析などに活用したいと考えている場合は不向きだといえます。

白色申告なら簡易簿記が認められる

白色申告の場合、帳簿の作成義務が緩やかで簿記の方法も簡易簿記が認められています。

たしかに、手書きで帳簿を作成するなら複数の帳簿を作成するのは大変なので、帳簿の付け方などに不安を感じるなら白色申告を選択したほうがラクに感じるかもしれません。

しかし、手書きではなく会計ソフトを利用するなら、データを入力すれば複数の帳簿に自動で仕訳けてくれます。

結果として帳簿に関する作業にかかる労力には大差がないので、節税効果を高めたいなら複式簿記での記帳がおすすめです。

複式簿記とは?

正式な会計簿記となるのが複式簿記です。

一般的に「簿記」とは複式簿記を指しています。

取引ごとに「借方」と「貸方」とを対にして記帳する方式で、借方・貸方の総計が一致する仕組みです。

お金の出入りだけでなく、財産の増減を同時に見ることができるので、経営分析に役立ちます。

複式簿記の記載例

複式簿記では、取引が発生した順番に「仕訳帳」へ記帳したうえで、その内容を「総勘定元帳」に転記していくのが基本です。

【仕訳帳の記載例】

3月1日に出版社への請求書を発行して売掛金が発生し、3月15日に支払いを受けた場合、仕訳帳には次のように記帳します。

日付 摘要 元丁 借方 貸方
3 1 (売掛金) 4 200,000
(売上) 3 200,000
〇〇出版社2月分売上
31 (普通預金) 2 200,000
(売掛金) 4 200,000
〇〇出版社から入金

仕訳帳の「元丁」は、総勘定元帳の何ページに転記したのかを示す欄です。

【総勘定元帳の記載例】

総勘定元帳の「仕丁」とは、仕訳帳の何ページに記載されているのかをあらわしています。

仕訳帳と総勘定元帳とがつながり、連動して資産の動きを詳しくあらわすのが複式簿記の特徴です。

総勘定元帳の「売掛金」のページの書き方は次のようになります。

日付 摘要 仕丁 借方 貸方 借貸 残高
3/1 〇〇出版社2月分売上 3 200,000 200,000

これは「売掛金という資産が増えた」という意味です。

もっとも、売掛金は増えたものの未回収で売上金という資産は増えていないので、「売上」のページでは貸方への記帳となります。

日付 摘要 仕丁 借方 貸方 借貸 残高
3/1 〇〇出版社2月分売上 3 200,000 200,000

後日、報酬が振り込まれて売掛金が回収できたら普通預金の資産が増えるので「普通預金」のページには借方に記帳します。

日付 摘要 仕丁 借方 貸方 借貸 残高
3/15 〇〇出版社2月分入金 3 200,000 200,000

報酬の振込によって売掛金が回収できたので「売掛金」のページには「売掛金という資産は減った」という意味で次のように記帳しなければなりません。

日付 摘要 仕丁 借方 貸方 借貸 残高
3/1 〇〇出版社2月分売上 3 200,000 200,000
3/15 〇〇出版社2月分入金 3 200,000 0

このように「報酬が振り込まれたので、売掛金という資産が減った代わりに普通預金の残高という資産が増えた」「現金という資産は減ったが、そのお金で事務用品という資産が増えた」といったかたちで資産の増減を同時に見られるのが複式簿記です。

わざわざ難しい複式簿記を使うメリット

複式簿記は理屈を理解して慣れてしまえば難しくありませんが、会計の知識がない初心者だとやはり難しく感じるものです。

最初のうちは帳簿のつけ方さえもわからず、苦戦するでしょう。

しかし、税制面で優遇される青色申告を選択する場合は、複式簿記での記帳が必須です。

青色申告を選択すれば最大65万円の特別控除が受けられるだけでなく、家族への給与も経費に計上できる、3年間にわたって赤字を繰り越し計上できるなど、さまざまなメリットを得られます。

帳簿作成が難しいと感じるなら会計ソフトを活用しよう

フリーランスになると、確定申告の必要から帳簿作成は避けられません。

とはいえ、帳簿作成に時間をかけ過ぎることは本業に支障をきたします。

カンタンに帳簿を作成したいなら、会計ソフトを上手に活用しましょう。

会計ソフトには有償・無償を含めてさまざまなものがありますが、ここではとくに「帳簿作成がラクになる」という点に注目しておすすめの会計ソフトを紹介します。

freee会計

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「freee会計」は、2022年6月末時点で38万のユーザーが有料課金している人気の会計ソフトです。

ソフトをインストールせずに利用できるクラウド会計ソフトのなかでは、圧倒的な高評価を誇っています。

freee会計なら、発生した取引の日付・勘定科目・金額を入力するだけです。

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大量のレシートもスマホアプリで撮影すれば自動で読み取ってくれるので、わずらわしい経費の入力作業の省力化が可能です。

銀行口座やクレジットカードの明細は自動取得で、カスタイマイズした仕訳ルールやAIによって経費仕訳をサポートしてくれます。

ソフトが自動で帳簿を作成してくれるので、何冊も帳簿を用意する必要もありません。

電子帳簿保存法にも対応しているだけでなく、年払い契約で1か月あたり980円という価格は、税理士への依頼と比べれば格段に安価です。

初回は30日間の無料期間が用意されているので、まずは無料で試すといいでしょう。

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やよいの白色申告オンライン・青色申告オンライン

弥生会計シリーズのうち、フリーランス向けのクラウド型会計ソフトが「やよいの白色申告・青色申告オンライン」です。

取引データの自動取り込み、仕訳けの自動登録機能があり、家計簿感覚で帳簿を作成できるので会計・経理の初心者でも悩まずに利用できるでしょう。

やよいのクラウド会計ソフトの大きな魅力は、白色申告ならすべての機能が無料で使えるフリープランが用意されているところです。

青色申告でも最初の1年間は無料、2年目からは有料ですが年額8,800円なのでfreeeよりも安く設定されています。

もちろん電子帳簿保存法にも完全対応です。

やよいの白色申告・青色申告オンラインを使うだけで、確定申告に必要な帳簿作成が完結します。

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さいごに

フリーランスにとっての「帳簿」とは、単なる収支の記録ではありません。

法令によって作成・保管を義務付けられたものであると同時に、自分自身の事業を分析するための大切な資料です。

最初のうちは帳簿のつけ方もわからず苦労するかもしれませんが、独学でも実務を通して簿記を習得することはかならず経営者としての経験値を高めてくれます。

会計ソフトを使えば思いのほか簡単に帳簿を作成できるので、まずは無料期間を活用して帳簿作成にチャレンジしてみましょう。

   
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