フリーランスが保育園の入園審査で不利になる理由と通過するためのポイントを解説
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フリーランスとして働く人にとって大きな悩みとなるのが「子どもを保育園に入園させるのは難しいのか?」という問題です。
とくに子育てと仕事の両立を目指しているママワーカーにとって、保育園に子どもを入園させられるのかどうかは大きな問題となるでしょう。
フリーランスでも子どもを保育園に通わせることは可能なのか、入園審査に通過するためにはどんな対策が必要なのかなどを解説していきます。
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溝口 弘貴
つなぐマーケティング代表
電気工事士からWeb業界に転職して10数年。現在はフリーランスとしてクライアントサイトのマーケティング支援や自社メディアの運用などをおこなっています。ネットマーケティング検定やIMA検定などIT関連の資格を8つもっています。運営者情報はこちら
フリーランスと「保活」の関係
フリーランスでも子どもを保育園に通わせるのは可能なのか?という問題を考えるにあたって、まず知っておくべきは「保活」という考え方です。
保活とは?
保活とは「子どもを保育園に入園させるために保護者がおこなう活動」を指します。
このような用語が存在するほど、ただ待っているだけでは入園できないのが保育園の実情です。
厚生労働省が公開している「保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)」によると、同日付で保育園への入所を希望しているものの入所が実現できていない待機児童数は、全国で2,944人でした。
2万人を超えていたピーク時と比較すると大幅な減少ですが、保護者が求職活動を休止している、特定の保育園への入所を希望しているなど自治体が待機児童にカウントしない「隠れ待機児童」も相当数が存在しているといわれています。
保活しなければ保育園に入園できないという状況は、いまだ続いていると考えていいでしょう
「保育園」の定義や種類
「保育園」とは、親が働いていたり、病気にかかっていたりして、家庭で十分な保育ができない子どもを家庭に代わって保育するための児童福祉施設のひとつです。
学校教育法に基づく教育施設である幼稚園や、とくに要件のない託児所などとは、立場も性質も異なります。
保育園には、大きく分けると国の基準を満たしている「認可保育園」と、国の基準を満たしていない「認可外(無認可)保育園」がありますが、人気が集まりやすいのは認可保育園です。
公的援助を受けているので保育料が安いというメリットがありますが、要件を満たさなければ入園できない、要件を満たしていても定員に達してしまえば入園できない、保育時間が限られている、居住する自治体内から保育園を選ばなければならないなどのデメリットも存在します。
認可外保育園では、保護者の就労などの要件は設けられていません。
休日や夜間の保育に対応しており利便性が高かったり、独自の教育方針を打ち出していたりする人気が高い認可外保育園もありますが、認可保育園に比べると保育料が高く設定されているため、保育料を抑えたい人には不向きです。
フリーランスと保活の現状
2017年4月にフリーランス協会がハフィントンポスト日本版と共催したワークショップ「#フリーランスが保活に思うこと」
のなかで実施されたアンケートによると「子どもの預け先がないことで仕事をセーブしたことがある、あるいは現在セーブしている」と答えた人は回答者の80%を占めました。
統計上は待機児童が減少しているとはいえ「子どもの預け先がみつからず、思ったように働けない」と困っているフリーランスはたくさん存在しているというのが現実です。
また、同アンケートでは東京23区・横浜・川崎在住者に絞って「直近の保活で入園申請をした園の数」も調査しています。
なんと、回答者の27%が「10件以上」と回答し、半数以上が「4~8件」と回答したという結果でした。
自治体の担当者から「自由な働き方をしているなら、保育のために休業するのもカンタンなのでは?」と評価されてしまう、実際は長時間の労働が発生しているのに「時間に融通が利くはずだ」と思われがちなど、保活で悩みを抱えるフリーランスは多いようです。
フリーランスが入園審査で不利になる理由
実際にフリーランスとして働いているのに、なぜ保活をしても子どもを保育園に入園させられないといった事態が起きるのでしょうか?
そこには、入園前の「審査」が大きく関係しています。
保育園の入園審査は点数制が採用されている
保育園は「仕事をしているので子どもを保育できない」などの事情がある人が利用できる児童福祉施設です。
そして、保育園に子どもを預ける必要性は、どの自治体でも点数によって評価されています。
点数が高いほど入園の必要性が高いと判断されて優先度が高くなり、反対に点数が低いと優先度が低くなる仕組みです。
点数の配分は自治体によって異なる
どの自治体でも点数制によって入園の可否が決まるという仕組みは同じです。
父・母の就労状況などから算出する「基準指数」と、そのほかの事情を考慮した「調整指数」の加算によって点数が決まります。
ただし、それぞれの点数配分や評価基準は自治体によってさまざまです。
同じ労働形態でも自治体によって点数に差が生じたり、特定の事情を優遇する自治体があれば同じ事情を抱えていても評価しない自治体があったりもします。
フリーランスは点数配分において不利な扱いを受けている
2022年4月時点において都内で最も待機児童が多かったのは町田市でした。
町田市では、どんな基準で点数を評価しているのでしょうか?
町田市では、労働形態を「居宅外労働」と「居宅内労働」に分類していますが、同じ日数・時間の労働でも居宅内労働のほうが低い設定になっています。
フルリモートで働く在宅勤務のエンジニア・デザイナー・ライターなどの職種では、どれだけ労働に時間を割かれていても不利な扱いを受けるというのが町田市の評価です。
政府が自由な働き方を推進している影響から、居宅外・居宅内の区別を設けず純然な労働日数・時間で評価する自治体も増えています。
しかし、町田市のように依然として「自宅にいるなら外に出て働く人よりも保育は容易だろう」と考える自治体も存在していることが、フリーランスが入園審査において不利になる大きな理由です。
収入額は関係ある?収入が低いと審査に落ちやすい?
フリーランスとして働いている人のなかには、配偶者の扶養の範囲内に入るように収入をコントロールしている人も多いでしょう。
すると「収入額が低いと『大して働いていない』と判断されて、審査に落ちやすいのではないか?」と不安を感じている人がいるかもしれませんが、基本的に収入額は審査に影響しません。
収入の証明を求められることもありますが、あくまでも「働いている」ことを証明する材料のひとつという位置づけです。
ただし、まったく収入がなかったり、きわめて少額の収入しか得ていなかったりすると、就労時間の兼ね合いから「本当に働いているのか?」という疑念を持たれてしまうおそれがあります。
就労時間に対して収入額が低い場合は、なぜ収入額が低いのかを説明できる資料を用意しておいたほうがいいでしょう。
保育園の入園審査を受ける際の必要書類
保育園の入園審査を受ける際の必要書類を挙げていきます。
なお、ここで挙げるのは一般的な必要書類です。
自治体によって名称が異なったり、定められた様式を使用するべきもの、様式にとらわれず証明できる書類を用意しなければならないものがあったりと、さまざまな違いがあります。
詳しくは、お住まいの自治体の役所にある子ども家庭部保育課などの窓口やホームページで確認してください。
どの世帯でもかならず提出が必要な書類
以下の書類は、世帯の状況などにかかわらず提出が必要です。
種類 | 内容 |
---|---|
入園申込書 | 入園の願書で、世帯状況や希望する園などを記入する |
教育・保育給付認定申請書 | 「保育を必要とする事由」に該当する保護者が認可保育園を利用するための申請書、満3歳以上(2号認定)・満3歳未満(3号認定)に分かれる |
保育を必要とする状況の証明書類 | 保護者の状況に応じて提出、就労中なら「就労証明書」を提出する |
児童の状況にかかる申告書 | 児童の健康状況や保育状況を申告する書類 |
フリーランスとして働いていることを証明するには?
会社員・公務員なら勤務先に就労証明書を作成してもらうだけですが、フリーランスの場合は個人事業主なので就労証明書に加えて就労状況を説明する資料を提出することになります。
こちらも自治体によって要否が異なりますが、一般的には次のような書類の提出を求められると考えておいてください。
種類 | 内容 |
---|---|
開業届の写し | 税務署に提出した個人事業の開業届出書の写し |
営業許可証の写し | 許認可が必要な業種であればフリーランスとして活動する実態を説明する資料になる |
確定申告書の写し | フリーランスとして働いて収入を得ていることの証明として必要 |
事業取引を証明する書類 | ✓開業届を提出していない、または開業して間もなく確定申告をしていないなどの事情がある場合は、実際に事業取引をしていることを証明する資料の提出を求められることがある ✓クライアントと交わした業務委託契約書、請求書、売掛金が入金された口座の明細などが挙げられる |
フリーランスの場合は、職種や契約の形態などによって、どのような書類・資料が「働いている」という証明になるのかが変わります。
提出を求められた書類・資料の用意が難しい場合は、ほかの方法で証明できないか自治体の窓口に相談したほうがいいでしょう。
該当者のみ提出を求められる書類
ここで挙げる書類は、該当者のみ提出を求められるものです。
状況に応じてほかの書類や資料の提出を求められることもあるので、自治体の指示に従って用意しましょう。
種類 | 内容 |
---|---|
同居祖父母の状況説明書類 | ✓同居している一定年齢未満の祖父母がいる場合は、祖父母が保育できない状況を説明する書類が必要になる ✓提出がないと減点対象になるので要注意 |
戸籍謄本・児童扶養手当の写し | ✓ひとり親の場合はその証明として提出が必要 ✓提出によって加点対象になる |
受託証明書 | ✓認可外保育園やベビーシッターなどを利用していることの証明 ✓加点対象になる |
フリーランスが保育園の入園審査に通過するためのポイント6つ
保育園の入園審査では、会社員や公務員として働く親と比べると、フリーランスとして働いているために不利な扱いを受ける可能性があるでしょう。
とはいえ、いくら在宅勤務だからといっても不自由なく子どもを保育できるのかといえば難しいのは当然であり、子どもを保育園に預かってもらわないと十分に働けないというフリーランスも多いはずです。
ここでは、フリーランスが保育園の入園審査に通過するために覚えておきたいポイント6つを挙げていきます。
ポイント1.事前に情報を集めて点数を試算しておく
入園審査における点数の基準や配分は、自治体によって異なります。
まずはお住まいの自治体が示す点数の基準や配分を調べて、現在の状況でどのくらいの点数になるのかを試算してください。
「何点あれば審査に通過するのか?」という疑問をもつ方もいるはずですが、自治体によっては保育園ごとに直近のボーダーラインを公開しているところもあるので、調べてみましょう。
もしボーダーラインに達していない、あるいはギリギリの点数であるといった場合は、加点が期待できる要件を探して証明に必要な書類・資料の用意を進めてください。
ポイント2.開業届を提出しておく
フリーランスとして独立した場合は、事業開始から1か月以内に税務署に開業届を提出するのが原則です。
未提出でもペナルティはないため開業届を提出していないフリーランスも多いのが現実ですが、個人事業主であることの証明としては開業届が大きな意味をもちます。
入園の申し込みにあたって、フリーランスの場合の必要書類として開業届を明示している自治体もあるので、すでに届出済みならその写しを、まだ届出をしていないなら申し込みまでに届出をしましょう。
なお、開業届の開業日は過去にさかのぼることも可能です。
すでにある程度の実績があるなら、過去の日付で開業を届け出るといいでしょう。
ただし、開業日のさかのぼりは可能でも、提出日や税務署の収受印の日付はさかのぼれません。
開業届に「〇年〇月〇日以前に提出したもの」という条件がある場合は注意が必要です。
ポイント3.満点を得られる就労実績を作る
ほとんどの自治体が、就労状況の基準指数の満点を「月20日以上(週5日以上)・1日8時間以上(週40時間以上)の就労を常態としていること」としています。
この基準は、一般的な週休二日のフルタイム労働と同程度です。
実際のフリーランスの働き方に照らすと、納期が近づいて土曜・日曜・祝祭日を問わず働いたり、家事に従事する時間もあるため連続しないものの8時間を超えて働いたりするケースもめずらしくないので、満点を得るのは難しくないでしょう。
就労時間の考え方
フリーランスの場合、基本の勤務時間が設定されているわけでもなければ、会社員のようにタイムカードなどによる就労時間の管理しているわけでもないので、就労時間の考え方が難しいでしょう。
確定申告書の写しなどの書類・資料を提出するので「収入が発生した就労時間だけをカウントするのだろうか?」という疑問をもっている人がいるかもしれませんが、営業・提案・ポートフォリオの作成など収入が発生していない時間も就労時間に含んで構いません。
当然、虚偽申告はするべきではありませんが、実際に業務へ従事している時間はすべて就労時間に含めてカウント可能だと考えてください。
ポイント4.認可外保育園への通園などで保育実績を作る
認可保育園への入園を申請するまでに、認可外保育園に通園させたり、ベビーシッターを利用したりといった保育実績を積んでおけば「保育の必要がある」と認められやすくなります。
現に認可外保育園などで保育を受けている場合は、委託先からの「受託証明書」を提出することで加点対象とする自治体が多いので、認可保育園への入園を前提に、まずは認可外保育園などを利用するのも加点を得るには有効です。
ただし、認可外保育園に通園させたりベビーシッターを利用したりすれば、当然保育料などの費用がかかります。
加点対象としても点数が低い自治体や反対に点数が高い自治体もあるので、費用負担に対して効果が期待できるほどの加点になるのか、お住まいの自治体の点数基準を確認しておきましょう。
ポイント5.激戦区を避けて0歳児クラスから入園させる
保育園の入園申込は、1歳児以上のクラスから殺到します。
なぜなら、ちょうど育児休暇が明けて仕事に復帰したいと考える保護者が増えるタイミングだからです。
また、1歳児以上のクラスは在園児の進級もあるので、新入園の枠が少なくなるケースもあります。
激戦区となる1歳児以上のクラスを避けて0歳児クラスから入園させれば、定員内に入ることができる可能性も高まるでしょう。
ポイント6.クライアント企業への常駐案件を選ぶ
自治体によっては、フルリモートの在宅勤務よりも居宅外で勤務しているほうが高い基準指数が設定されているところもあります。
職種によりますが、居宅外勤務のほうが有利になる自治体では、クライアント企業への常駐案件を選んで取得するのもいいでしょう。
なお、自治体によっては、コワーキングスペースなどを利用して居宅外で働いている時間を居宅外労働としてカウントできる場合もあります。
ライターなどのように企業常駐の案件が少ないフリーランスでも、工夫次第では有利な点数を得られるかもしれないので、自治体の窓口で相談してください。
さいごに
フリーランスでも「働くために子どもを保育できない」と証明できれば子どもを保育園に通わせることは可能です。
ただし、入園審査において「フリーランスだから」というだけで不利な扱いを受ける自治体もあるので、申込みに先立って対策を講じておかなければなりません。
まずはお住まいの自治体がどのような基準で保育の要否を決定しているのかを確認して点数を試算したうえで、加点が期待できる要件を調べてみましょう。
ホームページなどで確認してもわからない場合は、役所の担当窓口で「この場合はどうなるの?」と遠慮なく質問し、保活の成功につなげてください。
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